ニュースが「28年ぶり」と言っていました。大ごとらしい。
でもわたしは、それが自分の積立に何をするのか、まったく説明できませんでした。
証券アプリを開いてみて、「何かしたほうがいいのかな」とは思ったんです。でも、何をどうすればいいのかが分からない。円高が自分にとって得なのか損なのかも、はっきりとは言えませんでした。
だから調べました。この記事は、その調べた順番のまま書いています。結論を先に言うと、為替を理由には、積立の設定を1つも変えませんでした。ただ、それは「気にしないことにした」わけではなくて、調べた結果そうなったという話です。
数字はすべて楽天証券の画面と、公的機関・運用会社の資料から取りました(出典は末尾)。この記事の途中で、自分の持っている商品を1つ確かめてもらう場面が出てきます。手元で開けるようにしておくと、読み終わったときの納得が変わります。
そもそも円高・円安って、何だったか
ここでつまずいている自覚があったので、最初に確認しました。
1ドル160円→150円が「円高」
数字が小さくなるのに「高」なので、毎回ひっかかります。円の価値が上がったから「円高」と覚えると通ります。
たとえば1ドルの商品を買うとき、160円のときは160円払う必要がありました。150円になれば150円で買えます。同じ物を買うのに必要な円が減った。だから円の価値が上がっている。
投資の話に翻訳すると
これを積立の話に置き換えると、外国の資産を円に換算し直したときの値段が変わるということになります。
| 為替レート | 1ドルの物を買うのに 必要な円 |
|---|---|
| 1ドル=160円 | 160円 |
| 1ドル=150円 =円高 |
150円 10円少なくて済む |
ここが大事なところで、持っている株そのものは何も変わっていません。変わったのは、それを円で数え直したときの数字だけです。
為替介入とは、何をすることか
次に「介入」です。ニュースで何度も聞くのに、何をしているのか説明できませんでした。
政府と中央銀行が、通貨を売り買いする
為替介入とは、政府や中央銀行が意図的に通貨を売買して、為替レートを動かすことです。
今回は「円買い介入」でした。円安が行きすぎたので、円を買って、ドルを売った。買われれば値段は上がるので、円高方向に振れます。
そして今回は日本とアメリカが一緒にやりました。これを「協調介入」と呼びます。片方だけでやるより効きます。
なぜ「28年ぶり」が大ごとなのか
日本経済新聞によると、7月31日に実施されたこの協調介入は15年ぶりのことでした。前回は2011年、東日本大震災の直後です。
ただ、そのときは逆向きでした。震災後に円が買われすぎたので、円を売る介入だったんです。
今回のような「円買い」での協調介入は、28年ぶり。前回は1998年のアジア通貨危機を受けたものでした。
背景には、7月下旬にドル円が1ドル164円に迫り、およそ40年ぶりの円安水準になっていたことがあります。8月3日には、円相場は一時1ドル155円22銭近辺まで急伸しました。
💡 ここまでで分かったこと
「28年ぶり」が大ごとなのは、それだけ異常な円安だったから。そして政府が「これ以上は放置しない」と態度で示したということ。ただし——だから自分が何をすべきかは、まだ何も分かっていません。
自分の積立にどう効くのか——ドル建ての場合
ここからが本題です。円高になると、自分の持っているものはどうなるのか。
わたしが積み立てているのはオルカン(全世界株式)と日経225とFANG+の3本です。まずオルカンとFANG+から見ていきます。
株価が動かなくても、評価額は動く
オルカンは「全世界」を名乗っていますが、中身は米国が約64%です(MSCI ACWI・2026年6月末時点)。FANG+にいたっては米国のテック企業10社なので、ほぼ全部が米国です。
これらはドル建ての資産です。だから円に換算するときのレートが変われば、それだけで評価額が変わります。
たとえば1ドルの株を1つ持っているとします。1ドル160円のときは160円。150円になれば150円。株は1円も動いていないのに、円で数えると10円減っています。
1ドルの株を1つ持っている場合(株価はどちらも1ドルのまま)
株は1円も動いていないのに、円で数えると10円減っている。
自分の資産の何%がドル建てなのかを実際に数えた話は、積立の中身を通貨・国・セクターで洗い出した記事に書いています。ここではその話には踏み込まず、先に進みます。
じゃあ日経225なら無事なのか
ここでわたしは、少し安心しかけました。日経225は日本の会社の株なので、円建てです。円に換算し直す必要がないのだから、為替の影響は受けないはずだ、と。
そうはなりませんでした。
日経225には、輸出企業が多い
たとえばトヨタのような会社は、海外で売った代金をドルで受け取ります。それを円に換えて決算に載せる。
1ドル160円なら、100万ドルの売上は1億6,000万円になります。150円なら1億5,000万円。同じ量を売っているのに、円での売上が1,000万円減ります。
「想定為替レート」が崩れる
さらに会社は、年度のはじめに「今年はだいたい1ドル◯円くらいだろう」という前提を置いて、1年の業績見通しを立てています。これを想定為替レートと呼びます。
円高がその前提を超えて進むと、見通しそのものが崩れます。株価は将来の業績を織り込んで動くので、見通しが崩れれば株価も下がる。
8月3日に、実際そうなった
これは理屈の話ではなく、実際に起きたことです。
協調介入で円が急騰した8月3日、日経平均は前週末比607円12銭安(0.94%)の6万3,754円90銭で、3営業日ぶりに反落しました。日本経済新聞はその理由をこう書いています。
円高による業績悪化が懸念され、自動車、ゴム、鉄鋼など輸出関連とされる銘柄に売りが広がった
売られた銘柄として名前が挙がっていたのは、トヨタ、ファナック、アドバンテスト。日経225の中心にいる会社ばかりです。
| 円高になったとき | 為替換算で減る | 株価そのものが下がる |
|---|---|---|
| オルカン・FANG+ ドル建て |
減る | 米国企業の事情による |
| 日経225 円建て |
影響なし | 下がる |
逃げ場はない。経路が2つあるだけだった
整理すると、こういうことでした。
円建ての資産を持てば、為替換算からは逃げられます。でもその中身が輸出企業なら、業績という別の入り口から、同じ風が入ってくる。
「円建てだから安全」は成立しませんでした。
ドル建て
円建て
前回の記事で、自分の配分を商品名ではなく国で数え直したことがあります。オルカン50%・日経225 25%・FANG+ 25%という配分は、国で見ると米国が約57%でした(→オルカン1本だと口座を開かなくなる。だから25%だけ崩した話)。
その米国ぶんは為替換算の経路で、日本ぶんは業績の経路で、どちらも円高の影響を受ける。分けたつもりでも、入り口が2つあっただけでした。
本当に逃げる方法はあった——為替ヘッジ
ここまで調べて、はじめて「為替ヘッジ」という言葉にたどり着きました。名前は聞いたことがありましたが、中身はわかっていませんでした。
将来のレートを、先に約束しておく
為替ヘッジとは、将来の為替レートを今のうちに約束しておく取引のことです。「3ヶ月後に1ドル157円で交換する」と先に決めておけば、その間に円高が進んでも影響を受けません。
つまり円高への保険です。ただし、保険らしく2つの性質があります。
| 保険に入らない 為替ヘッジなし |
保険に入る 為替ヘッジあり |
|
|---|---|---|
| 円高になったら | 減る | 減らない |
| 円安になったら | 増える | 増えない |
| 保険料 | 0円 | 年 約2.6% |
見落としがちなのが真ん中の行です。この保険に入ると、円安で増えるぶんも同時に手放すことになります。損を防ぐかわりに、得も捨てる。
でも、保険料が信託報酬の46倍だった
問題は保険料でした。
なぜ、ただではないのか
ヘッジをかけるということは、ドルを手放して円に戻す約束をするということです。約束した時点で、金利の高いドルで持ち続ける権利を捨てて、金利の低い円の条件に戻ることになります。
だから、その金利の差ぶんがコストになります。今の水準はこうです。
- アメリカの政策金利:3.50〜3.75%(2026年7月のFOMCで据え置き。5会合連続)
- 日本の政策金利:1.00%(2026年6月の日銀決定会合)
- 差し引き:年およそ2.6%
これがヘッジの保険料の目安になります。実際には市場の金利やドルの需要でも動くので、あくまで概算です。
信託報酬と並べてみる
この2.6%が高いのか安いのか、単体では分かりませんでした。だから、いつも気にしている数字と並べてみました。
わたしが積み立てている楽天・プラス・オールカントリーの信託報酬は、年0.0561%(税込)です。100万円を1年預けて561円。
対して為替ヘッジの保険料は年約2.6%。およそ46倍です。
コストを1円でも下げたくて信託報酬0.05%台の商品を選んでいる人間が、為替から逃げるために年2.6%払うのか。そう考えると、答えは出ていました。
そこで気づいたこと
ここまで来て、遅ればせながら気づいたことがあります。
楽天証券の商品ページを開いてみたら、分類の欄にこう書いてありました。
「先進国・新興国株式(広域)- 為替ヘッジ無し」。ずっと前からそこに書いてありました。
つまり——
気づいたこと
わたしはとっくに「為替リスクを取る」と決めていた。この商品を買った時点で。
ただ、決めた自覚がなかっただけでした。
ヘッジという選択肢があることも、それにいくらかかるのかも知らないまま、選ばない側を選んでいた。今回はじめて、その中身を見た形です。
だから、為替を理由には設定を変えなかった
調べ終わって、積立の設定画面を開きました。そして何も変えずに閉じました。
理由は3つあります。
設定を変えなかった3つの理由
① 逃げ道はあったが、通行料が年約2.6%だった
② 逃げた先でも、別の経路から同じ風を受ける
③ 自分はもう、為替リスクを取ると決めていた
① 逃げ道はあったけれど、通行料が年2.6%でした。信託報酬の46倍を払ってまで為替を避ける理由が、自分には見つかりません。
② 売って買い直すにも、円建てに寄せるにも、逃げた先で別の経路から同じ風を受けることが分かりました。日経225がそうだったように。
③ これが一番大きいのですが、自分はもう為替リスクを取ると決めていた、と分かったから。
ニュースを見て慌てて動くのは、コストを比べて出したその結論を、自分の手で壊すことになります。決めたことを、決めた覚えがないという理由で覆すのは、たぶん一番やってはいけないことです。
ちなみに、今回の円高で自分の評価額がいくら減ったのかは正確には分かりません。毎日の記録をつけていないからです。そしてこれから記録をつけるつもりもありません。金額を追いかけても、この結論は変わらないので。
この記事のあとの話
ここまでが8月上旬の記録です。このあとわたしは、オルカン1本にしました。ただしそれは為替とはまったく別の理由で、本を読んで考えが変わったからです。その話は改めて書きます。
これから始める人にとってはどうか
ここまでは、すでに積み立てている人の話でした。まだ始めていない人にとって、円高はどうなのか。
円高ということは、同じ金額でより多くの外国株が買えるということです。だから、始めるのに不利な局面ではありません。
ただし「今がチャンスだから急げ」とは言いません。為替は当たらないし、そもそもタイミングを気にしなくていいのが積立だからです。
言えるのはひとつだけで、今日始めない理由が「円高だから」なら、それは理由になっていません。
まとめ|知らないと怖い。知ると「何もしない」を選べる
為替は当てるものではありません。プロでも当たらない。
できるのは、自分の持ち物にどの経路で効くのかを知っておくことだけです。
✅ 調べて分かったこと
- ドル建て(オルカン・FANG+)は為替換算で減る
- 円建て(日経225)も業績を通じて減る。逃げ場はない
- 本当に逃げる方法(為替ヘッジ)はあるが、保険料が年約2.6%
- だから多くの人は「ヘッジなし」を選んでいる。ただし選んだ自覚がない
この記事を書く前のわたしは、「円高らしい、なんか怖い」でした。書いたあとは「減る理由は2つあって、逃げ道は高すぎて、だから自分はもう選んでいた」に変わりました。
やることは何もありません。でも、何もしないことを自分で選べるようになりました。無自覚に何もしないのと、分かったうえで何もしないのとでは、次に相場が動いたときの落ち着きが違うはずです。
あなたの持っている商品は、為替ヘッジありですか、なしですか。目論見書か商品説明のページに、一行だけ書いてあります。
そのほか、自分の配分をどう決めたかはオルカン1本だと口座を開かなくなる話、中身の通貨や国の偏りは積立の中身を洗い出した記事、そもそもオルカンって何という方はオルカンとは?で書いています。
参考・出典
- 日米が15年ぶり協調介入、円安阻止で思惑一致|日本経済新聞(実施日・15年ぶり・円買いでは28年ぶり・164円に迫る40年ぶり安値)
- 東証大引け 日経平均は3日ぶり反落 日米協調介入で円急騰 輸出銘柄に売り|日本経済新聞(8月3日の終値・下落幅・155円22銭・売られた業種と銘柄)
- 楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンド|楽天証券(管理費用(含む信託報酬)0.0561%・楽天証券分類「先進国・新興国株式(広域)- 為替ヘッジ無し」/2026年8月7日更新時点)
- 日本銀行(政策金利 1.00%・2026年6月金融政策決定会合)
- MSCI ACWI(全世界株式)とは?|三菱UFJアセットマネジメント(米国の構成比率 約64%・2026年6月末時点)
※本記事の為替レート・金利・構成比率は2026年8月上旬時点のものです。相場や政策で日々変動します。また、特定の商品や投資判断を推奨するものではなく、筆者が調べて考えた過程を記録したものです。投資の判断はご自身の責任でお願いします。
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