2歳の娘に、本を読んでほしいと思っている。だから絵本を買って、部屋に置いた。でも、それだけでは読まない。当たり前といえば当たり前なのだけれど、買い与えれば読むようになる、というものではなかった。
それと、早く寝てほしい。21時には寝かせたい。ただ、わたし自身の仕事が長引く日もあって、気づけば22時を過ぎていることもあった。寝る時間が遅れれば、翌朝もぐずぐずになる。この繰り返しだった。
ちなみに、これはうちだけの話ではないらしい。調べてみると、親の約7割は「21時までに寝かせたい」と思っている一方で、実際の子どもの就寝時刻は21時以降が半数以上だという。理想と現実がずれているのは、わりと多数派なのだ。
そこで最近、夜の過ごし方を変えてみることにした。といっても、何か新しいことを始めたわけではない。むしろ逆で、やめたことが3つある。この記事は「何をしたか」ではなく「何をやめたか」の話だ。そして結果的にいちばん変わったのは、娘ではなく自分のほうだった。
やめたこと① 娘の前でスマホをいじるのをやめた
最初に気づいたのは、自分のことだった。
娘には「本を読んでほしい」と思っている。なのに、その隣でわたしはスマホをいじっている。仕事のメールを見たり、ニュースを眺めたり、ブログのアクセスを確認したり。理由はいろいろあるけれど、娘から見れば全部同じで、ただ「パパが手のひらの板を見ている」だけだ。
そりゃあ、娘もiPadを見たがるよな、と思った。子どもは、言われた通りにはやらない。見た通りにやる。「本を読みなさい」と言葉で百回言うより、親が本を開いている姿を一回見せるほうが早い。頭では分かっていたつもりだったけれど、自分がその逆をやっていたことに、あるとき急に気づいてしまった。
これを裏づけるデータもある。厚生労働省の21世紀出生児縦断調査によると、本を読む母親の子どもは94.9%が本を読むのに対し、本を読まない母親の子どもでは88.0%にとどまる。差そのものは劇的ではないけれど、親の行動が子どもの習慣に効いていることは、数字にもちゃんと出ている。
この記事の出発点
子どもは言われた通りではなく、見た通りに育つ。だとすれば、変えるべきは子どもの行動ではなく、子どもから見えている親の姿のほうだった。
ということで、娘が起きている間、居間ではスマホを置くことにした。完全に触らないのは無理だけれど、少なくとも娘の目の前ではポケットに入れておく。たったこれだけのことが、思っていたよりずっと難しかった。手持ち無沙汰になると、無意識に手が伸びる。自分がどれだけ癖でスマホを見ていたのか、やめてみて初めて分かった。
やめたこと② 「本を読みなさい」と言うのをやめた
次にやめたのは、声かけのほうだ。
「本読もうか」「これ面白いよ」と誘うのをやめて、代わりに何も言わず、隣で自分が本を開くことにした。読み聞かせをしない、という意味ではない。読んでほしいときは読む。ただ、それ以外の時間に「読みなさい」と促すのをやめた、ということだ。
夜に読んでいるのは小説が多い。ビジネス書だとどうしても仕事の延長になってしまって、頭が休まらないからだ。今読んでいるのは夕木春央の『方舟』。地下建築に閉じ込められた人たちの話で、続きが気になって仕方ない。こういう本のほうが、自分が読書に没頭できる。娘の隣で「読んでいるフリ」をしていても、たぶん見透かされる。
Kindleは、娘の前では使わないことにした
ここが、今回いちばん考えたところだ。
わたしはKindle Paperwhiteを持っている。以前レビュー記事も書いたくらいで、道具としては本当に気に入っている。軽いし、暗い部屋でも読めるし、何冊でも持ち歩ける。だから本来なら、夜の読書もKindleで済ませたい。
でも、やめた。娘の前では使わないことにした。
理由はシンプルで、わたしが「本を読んでいる」つもりでも、2歳の娘から見れば、それはタブレットを触っている大人にしか見えないからだ。せっかくスマホを置いたのに、代わりに似た形の板を持っていたら、伝わる絵は何も変わらない。むしろ「パパはあの板ならいいんだ」という話になってしまう。
⚠️ 道具は同じでも、子どもから見える絵が違う
Kindleが悪いという話ではない。実際わたしは、通勤中や一人の時間ではKindleを使っている。ただ「子どもに背中を見せる」目的の時間だけは、紙の文庫を持つ。同じ読書でも、相手にどう映るかで道具を変える、というだけの話だ。
だから最近、久しぶりに紙の文庫を買うようになった。娘の前では紙、それ以外はKindle。使い分けと言えば聞こえはいいけれど、実際は「見られている時間だけ、ちょっと気をつけている」に近い。
やめたこと③ 19時半以降、居間のテレビをつけるのをやめた
3つめは、テレビだ。
スマホを置いて、隣で本を開いても、テレビがついていれば意味がなかった。画面が動いていると、大人も子どもも視線がそちらに吸い寄せられる。自分は本を持っているのに、目はテレビを追っている。これでは背中も何もない。
そこで、19時半になったら居間のテレビを消すことにした。番組の途中でも消す。時間で決めてしまうのがポイントで、「キリのいいところで」にすると、いつまでもキリがこない。3つやめたことのうち、これだけが明確な時刻のルールになっている。
あなたの家では、夜のテレビは何時までついているだろうか。うちは以前、寝室に向かう直前までついていた。消すタイミングを決めていなかった、というのが正確なところだ。
ちなみに、寝る前の画面には根拠のある話もある。WHOの目安では、2歳以上の子どものスクリーンタイムは1日1時間以内とされている。さらに、寝る前に画面を見るとブルーライトがメラトニン(眠気を促すホルモン)の分泌を抑えてしまい、体内時計が夜型にずれていく。つまり、寝かしつけの直前までテレビをつけているのは、寝かしつけを自分で難しくしているようなものだった。
テレビを消した後の”空白”を埋めたのは音楽だった
ただ、テレビを消すと問題が起きる。静かすぎるのだ。
それまで当たり前にあった音が消えると、部屋が急にがらんとする。手持ち無沙汰になって、結局スマホに手が伸びそうになる。テレビを消すのが目的なのに、その空白に耐えられない。ここが、実際にやってみて分かったつまずきどころだった。
それで、音楽を流すことにした。iPhoneからBluetoothでスピーカーにつないで、朝と夜に鳴らしている。使っているのはAnkerのSoundcore Motion 100。テレビの代わりに音を置く、という発想だ。
面白いのは、朝と夜で流す曲がまったく違うことだ。
| 時間帯 | 流す曲 | 役割 |
| 夜 | 歌詞のない曲 | 静かに沈めていく。自分が本を読むため |
| 朝 | 流行りの曲(HANA、Mrs. GREEN APPLE など) | 起きて動き出すスイッチにする |
夜に歌詞のない曲を選んでいるのは、自分が本を読んでいるからだ。言葉のある曲だと、そちらに意識が持っていかれて文章が入ってこない。逆に器楽だけなら、音があるのに静か、という不思議な状態になる。テレビを消した後の空白を埋めながら、読書の邪魔をしない。この一点だけで、夜の質がだいぶ変わった。
朝は真逆で、流行りの曲をかける。HANAやミセスあたりを鳴らしておくと、部屋の空気が起きる。娘も自然と体が動き出すし、こちらも支度が進む。同じ1台のスピーカーが、夜は沈めるために、朝は立ち上げるために働いてくれている。
スペックの話をすると長くなるので省くけれど、この用途で選ぶなら、部屋に置きっぱなしにできて、会話がかき消されない程度の音量で鳴らせるものであれば十分だと思う。テレビを消す習慣とセットにすると効いてくる。
そもそも、子どもの睡眠ってどれくらい必要なのか調べてみた
ここまで「21時に寝かせたい」と書いてきたけれど、そもそもこの目標が妥当なのかは、実はよく分かっていなかった。なんとなく早いほうがいいだろう、という感覚でやっていただけだ。ということで、調べてみた。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」によると、1〜2歳児に推奨される睡眠時間は、昼寝を含めて11〜14時間。これは米国睡眠医学会の指針を引用したものだ。仮に朝7時に起きるとして、昼寝を1〜2時間とすると、夜は10時間前後ほしい計算になる。逆算すると就寝は21時前後。今やっていることは、だいたい合っていた。
ついでに知って驚いたのが、日本の子どもはどの学年でも約9割が睡眠不足だというデータだ。そして文部科学省の調査では、就寝時刻が早い子どもほど体調不良を訴えることが少なく、就寝が遅い子どもほどイライラする割合が高い、という傾向も出ている。
調べて分かったこと
- 1〜2歳の推奨睡眠時間は昼寝込みで11〜14時間(厚労省・睡眠ガイド2023)
- 日本の子どもは、どの学年でも約9割が睡眠不足
- 就寝が早い子ほど体調不良が少なく、遅い子ほどイライラしやすい傾向(文科省)
- 2歳以上のスクリーンタイムは1日1時間以内が目安(WHO)
なんとなく良さそうだと思ってやっていたことに、あとから根拠がついてきた形だ。順番としては逆かもしれないけれど、調べたことで「これは続けたほうがいいな」と腹落ちした。こういうのは、自分で調べてみないと本気になれない。
娘に起きた変化と、まだできていない日のこと
始めてまだ日は浅いけれど、変化はいくつかある。
ひとつは、朝起きるのが早くなったこと。夜に早く眠れば朝も早い、という当たり前のことなのだけれど、実際に自分の家で起きると納得感が違う。朝のバタバタが減っただけでも、こちらの機嫌がだいぶ良くなった。
もうひとつ、これがいちばん嬉しかったのだけれど、「寝るよ」と言うと「はい!」と返ってきて、そのまま寝るようになった。前は寝室に行くまでがひと苦労で、テレビの前から引き剥がすところから始まっていた。今は、夜の流れの延長にそのまま就寝がある。抵抗する理由が、そもそもなくなったのだと思う。
とはいえ、毎日完璧にできているわけではない。わたしの仕事が長引けば夕食も風呂も後ろにずれて、22時を過ぎる日もある。始めたばかりなので、まだ習慣として固まったとも言えない。だから、これは「こうすればうまくいきます」という方法の紹介ではなくて、今のところこうしている、という途中経過の記録だ。
やめただけで、変わったのは娘より先に自分だった
あらためて振り返ると、やったことは3つだけだった。
わたしがやめた3つのこと
- 娘の前でスマホをいじるのをやめた(Kindleも娘の前では使わない)
- 「本を読みなさい」と言うのをやめて、隣で自分が読むことにした
- 19時半以降、居間のテレビをつけるのをやめた
どれも新しく始めたことではなく、やめたことだ。教材も、しつけの技術も、特別な準備もいらない。ただ、自分が手に持っているものを置いて、リモコンに手を伸ばさない。それだけで、夜の空気が変わった。
そして、いちばん変わったのは娘ではなく自分だった。スマホを置いたら本が読めるようになった。テレビを消したら、夜が静かになった。娘のためにやり始めたことなのに、気づけば自分の夜が戻ってきていた。子どもに何かをさせようとするより、自分の手元を変えるほうが早い。今回いちばん実感したのは、そこだった。
もし今、同じようなことで悩んでいるなら、いきなり全部やる必要はないと思う。まずは今夜、いつもより30分だけ早くテレビを消してみる。それだけでも、家の空気は少し変わる。静かすぎて落ち着かなかったら、そのときは音楽でも流せばいい。
なお、Kindle自体は本当に良い道具だと思っている。娘の前では使わないというだけで、一人の時間には手放せない。気になる方はKindle Paperwhiteのレビュー記事もあわせてどうぞ。
参考・出典
- 健康づくりのための睡眠ガイド2023(厚生労働省)
- 21世紀出生児縦断調査(厚生労働省)
- スマホやテレビ、寝る前だけはやめてみない?(ベネッセ教育総合研究所)
- 小児科専門医の相談室「日本の子どもの睡眠が危ない」(日本医師会女性医師支援センター)
- 寝ない2歳児!試行錯誤してたどり着いた寝かしつけ方法とは?(&あんふぁん)
※本記事は特定の育児方法を推奨するものではなく、わたし自身の家庭での実践記録です。睡眠や発達に関する心配ごとがある場合は、かかりつけの小児科医にご相談ください。※本記事にはアフィリエイトリンクが含まれています。リンクを経由して購入いただいた場合、わたしに少額の報酬が入ることがあります。記事の内容はリンクの有無に関わらず、わたし自身の評価・意見に基づいています。

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